日本の水素・アンモニア燃料技術開発企業
日本政府は2030年までに水素300万トン、アンモニア300万トンの導入を目標に掲げ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて水素社会推進法を施行。総額3兆円規模の支援が予定されています。クリーン燃料アンモニア協会には17カ国219の企業・研究機関が参加し、日本企業だけで67社以上が名を連ねます。
重工業メーカーの戦略分化: 国内大手3社の選択は明確に分かれており、IHIはアンモニア専焼ガスタービンで2030年の実用化を目指し、2025年夏から兵庫県相生市で実機サイズの燃焼試験を開始。川崎重工業は液化水素に注力し、2029年までに世界初の実用船を完成させる計画です。三菱重工業は両輪戦略を採用し、2025年12月にはアンモニア分解による水素製造技術を発表。従来比2割の運転コスト削減を実現し、2030年度の実用化を目指しています。
電力・エネルギー企業の実証: JERAは碧南火力発電所で世界初の大型商業炉アンモニア混焼実証を進め、2027年度の商用運転開始を計画。2040年代には専焼への移行を見据えています。電源開発(J-POWER)はオマーンで約4.5GWの再エネ設備と2.5GWの水電解装置を導入し、グリーン水素/アンモニア製造事業に参入しました。
スタートアップの技術革新: 東京工業大学発のつばめBHBは、エレクトライド触媒により従来のハーバー・ボッシュ法と比較して温度を約100度低減し、圧力を約4分の1に抑えた小型アンモニア製造プラントを開発。2025年8月に新潟県柏崎市で初の商用施設が稼働開始し、国内2号機も受注済みです。UAEのADNOCとの協業やEUスタートアップスケールプログラムへの選出など、グローバル展開を加速しています。
商社・海運のサプライチェーン構築: 商船三井は35,000cbm型アンモニア/LPG輸送船によるアンモニア輸送事業に再参入し、浮体式アンモニアクラッキング設備の基本承認を取得。伊藤忠商事は2025年を目途にシンガポールでアンモニア供給施設を開発し、川崎汽船らと2026年竣工予定の20万トン級アンモニア燃料船の基本設計承認を取得しました。丸紅はカナダで年産約100万トンのブルーアンモニア生産プロジェクトを推進しています。
化学メーカーの転換: 国内アンモニア生産は昭和電工、日産化学、三井化学、UBEの4社に集約され、年産約100万トンの8割を担います。住友化学、三井化学、三菱ガス化学、UBEの4社は2021年にクリーンアンモニアの安定確保に向けた共同検討を開始。昭和電工は廃プラスチックからアンモニアを製造するケミカルリサイクル技術を確立し、100%廃プラ由来の生産も視野に入れています。
舶用エンジン開発: ジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)は世界初の舶用低速2ストロークアンモニア燃料エンジンを開発中で、2025年度に初号機「UEC50LSJA」が完成予定。水素燃料エンジンは川崎重工業、ヤンマーパワーテクノロジーとの共同出資会社HyENG経由で開発し、2026年度から約1年間の実機検証運転を実施します。日本郵船、IHI原動機、日本シップヤードとともに大型アンモニア運搬船の基本設計承認を取得し、2026年度の実証運航を目指しています。
水素・アンモニア燃料技術は発電、船舶、製造、輸送と多岐にわたる領域で開発が進行中で、2025年から2030年にかけて実証から商用化へのフェーズ移行が本格化します。技術開発の成否がサプライチェーン構築における競争優位性を左右する重要な局面を迎えています。