バイオバンク・生体試料保管サービス市場の現状
日本のバイオバンキング市場は2024年に約38億ドル規模に達し、2033年まで年率4.4%で成長が予測されています。製薬企業の創薬研究や個別化医療の進展に伴い、高品質な生体試料へのアクセスが競争力を左右する時代となりました。
現在、日本医療研究開発機構(AMED)が推進する「バイオバンク・ネットワーク ジャパン」には14の主要施設が参画し、バイオバンク・ジャパン(27万人)、東北メディカル・メガバンク(15万人)、ナショナルセンター・バイオバンクネットワーク(42万検体)の三大バイオバンクを中心に、疾患特化型・地域コホート型の多様な試料が蓄積されています。これらは2019年にバイオバンク横断検索システムで一括検索可能となり、研究者の利便性が大幅に向上しました。
一方で、従来の公的バイオバンクは「共同研究のみ」という制約や申請に2ヶ月を要する手続きの煩雑さから、製薬企業は海外バイオバンクからの調達を選ぶケースも少なくありませんでした。この課題に対し、リプロセルのような民間バイオバンクは4大陸60万検体の商用分譲体制を構築し、迅速な試料供給を実現しています。また、Cryoport SystemsはGMP準拠の受託保管サービスで再生医療・バイオ医薬品企業の厳格な品質要件に応えています。
技術面では、全自動試料保冷庫やLIMS連携による入出庫管理、液体窒素下-180℃での長期保存、到着後6時間以内の凍結処理といった品質管理が標準化されつつあります。さらに、ゲノムデータとの統合解析、AIによるデータ分析、ブロックチェーンを用いたトレーサビリティ強化など、バイオバンキングのデジタル化も急速に進展しています。
製薬企業の研究開発部門が試料調達先を選定する際は、(1)試料提供方式(分譲 vs 共同研究限定)、(2)申請から提供までのリードタイム、(3)品質認証(ISO、GMP等)、(4)臨床情報の詳細度、(5)ゲノムデータとの連携可否、の5軸で比較検討することが推奨されます。大学バイオバンクの手続き負担を回避したい場合は商用サービス、公的研究費での共同研究が前提なら三大バイオバンク、再生医療等製品の治験用試料ならGMP準拠施設、といった使い分けが実務では一般的です。
今後は、国際標準(ISO 20387等)への適合、希少疾患・アジア人種特有の遺伝的背景を持つ試料の充実、そしてデータ駆動型創薬に対応したマルチオミクス解析基盤の整備が、競争優位性を決定づける要素となるでしょう。