日本におけるカーボンフットプリント・LCAソフトウェア市場
2025年現在、日本企業のサステナビリティ担当役員と環境管理部門は重大な転換点に直面している。スコープ3算定義務化、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)対応、EU-CBAM(炭素国境調整メカニズム)への備えが待ったなしの状況だ。製品レベルでのCO2排出量可視化と開示資料作成は、もはや「推奨事項」ではなく「必須要件」となった。
グローバルLCA(ライフサイクルアセスメント)ソフトウェア市場は2024年に2.3億ドルと評価され、2025年の2.6億ドルから2032年には6.95億ドルへ成長すると予測される(CAGR 15.0%)。日本市場でも、コンサル委託から内製化への移行、Excelベースの手作業から自動化と監査対応可能なシステムへの転換が急速に進んでいる。
国内プレイヤーとグローバルツールの共存
日本市場は独自の発展を遂げている。産総研のAIST-IDEAデータベースを標準搭載するMiLCA(一般社団法人サステナブル経営推進機構)が2010年以来、日本国内で累計1,000組織以上に採用され、日本の統計データに基づく高解像度の環境影響モデリングを提供している。SuMPOは2025年6月2日に新たな「LCA・CFP検証サービス」を開始し、算定結果の正確性と透明性を第三者検証する体制を整えた。
一方、株式会社ゼロボード(Zeroboard)はクラウドネイティブなGHG排出量算定プラットフォームとして、経済産業省が推進するサプライチェーンデータ連携基盤「Ouranos Ecosystem」認定アプリケーションに採択され、ISO14064-3準拠のシステム妥当性確認を日本で初めて取得している。アスエネ株式会社は2024年11月に「ASUENE LCA」を、2025年2月に英語版をローンチし、SuMPOの排出係数を世界で初めて組み込むことで中小企業でも1分でCFP/LCA算定が可能なエントリーモデルを提供している。e-dash株式会社は三井物産のLCA Plusと事業統合し、企業レベルのGHG算定(e-dash)と製品レベルのCFP算定(e-dash CFP)を一元化したポートフォリオを展開。日本最大のデータベースIDEAを標準搭載し、Catena-X連携によりグローバルサプライチェーンでの安全なデータ連携を実現している。
グローバルツールでは、オランダPRé Sustainability開発のSimaPro(日本代理店:TCO2株式会社)と、ドイツSpheraのLCA for Expert(旧GaBi)(日本法人:Sphera Solutions Japan株式会社)が、日本のLCA専門家、企業、研究機関で圧倒的なシェアを持つ。2025年9月、One Click LCAがSimaProとPRéを買収し、世界最大のLCAプラットフォームベンダーが誕生したことで、市場の再編が進んでいる。
ERPベンダーの参入と実装事例
大手ERPベンダーも本格参入している。SAP Sustainability Footprint Managementは日本の松本精密(福島県)に導入され、SAP S/4HANAの製造実績情報から製品ごとのCO2排出量を自動計算し、取引先へ製品レベルの排出情報を提供している。IBM Envizi ESG Suite(日本国内販売:SB C&S、伊藤忠テクノソリューションズ等)は、GHGプロトコルに準拠したAI駆動のGHG排出量計算を提供し、175カ国で20年以上の実績を持つ。Persefoniは日本法人(Persefoni Japan合同会社)を設立し、日立システムズを通じて炭素会計プラットフォームを展開している。
食品業界では、シンガポールTerrascope社がポッカサッポロと協働し、5,000 SKUのCFP算定を100分で完了し、サプライヤー実データなしで92%の精度を実現した実績を持つ。日本ペイントは2025年12月に「SUSTAINA SYSTEM」を開始し、第三者認証を受けた計算ルールに基づく塗料のCFPを法人顧客に提供している。
規制環境と技術動向
日本自動車工業会(JAMA)は2024年9月に「自動車製品のカーボンフットプリントガイドライン2024年版」を策定。金融庁は2027年度決算(2028年提出分)から東証プライム企業にIFRS S2相当の気候情報開示を義務化する方向で検討中であり、スコープ1-3および製品・サービス別排出原単位の開示が求められる見込みだ。
経済産業省・環境省は2025年3月に一次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイドラインを公表し、ISO規格やCFPガイドラインを参照した計算ルール策定を支援している。この動きは、推定値や二次データではなく、サプライヤーからの実績値(一次データ)に基づく高精度算定への移行を促している。
「このリストに含まれる企業は、製造業のサステナビリティ担当役員が内製化による信頼性向上とコスト削減を実現するための戦略的パートナーとなる。」
選定にあたっては、対応規格(ISO 14040/14044、GHGプロトコル)、データベースの網羅性(AIST-IDEA、ecoinvent、Sphera MLC等)、スコープ3・一次データ対応、自動計算・API連携能力、日本語対応、実装事例の有無を総合的に評価することが重要だ。