CRO業界の構造と選定の実務
日本のCRO市場は2023年に2,500億円規模に到達し、製薬企業の治験業務委託率は3〜5割と欧米(6〜8割)に比べて成長余地が大きい。日本CRO協会(JCROA)には正会員13社・賛助会員36社の計49社が加盟しているが、実際には協会非加盟の中小専門CROや海外大手CROの日本法人を含めると100社以上が存在する。
委託先選定では、得意領域のマッチングが最も重要である。例えばイーピーエス(EPS)は「がんといえばEPS」と評されるオンコロジー領域での圧倒的実績を持ち、新日本科学(SNBL)は非臨床試験で国内トップシェアを誇る。リニカルは日本発のグローバルCROとして国際共同治験に強みを持つ。
製薬企業の臨床開発部門にとって、CRO選定は単なるコスト比較ではなく、治験の成否を左右する戦略的パートナー選びである。適応症の専門性、過去の承認取得実績、PMDAとのコミュニケーション能力、デジタル治験(DCT)への対応力などを総合的に評価する必要がある。
大手総合CROと専門特化型CROの使い分け
シミックのような大手総合CROは、プロトコル企画から製造販売後調査まで一気通貫のサービスを提供でき、複数相にまたがる長期プロジェクトに適している。一方、特定疾患領域や希少疾患に特化した中小CROは、深い専門知識とKOL(Key Opinion Leader)ネットワークを持ち、患者リクルートメントで優位性を発揮する。
グローバル治験とCRO選定
国際共同治験では、IQVIA、Parexel、PPD(新日本科学PPD)、FortreaといったグローバルCROの活用が標準となっている。これらは70カ国以上に拠点を持ち、多地域の規制対応や中央モニタリング体制を整備している。日本企業がグローバル開発を目指す場合、日本CROとグローバルCROのコンソーシアム体制を組むケースも多い。
デジタル治験(DCT)と次世代CRO
2020年代以降、デジタル治験(Decentralized Clinical Trial)への対応力がCRO選定の重要指標となっている。EPSはDCTのフロントランナーとして、ウェアラブルデバイスを用いた遠隔モニタリングや患者参画型デザインに注力している。COVID-19パンデミックを契機に、治験実施医療機関への訪問を減らしながら品質を担保する新しいモデルが急速に普及している。
| CRO類型 | 代表企業 | 最適なユースケース |
|---|---|---|
| 大手総合CRO | シミック、EPS、IQVIAジャパン | Phase II〜IIIの大規模試験、複数相一貫委託 |
| 専門特化型CRO | リニカル(オンコロジー) | 特定疾患の深い専門性が必要な試験 |
| 非臨床特化CRO | 新日本科学、ボゾリサーチセンター | 前臨床試験、トキシコロジー評価 |
| グローバルCRO | Parexel、Fortrea、ICON | 国際共同治験、多地域承認申請 |
CRO協会のデータと市場透明性
JCROAは年次業績報告を公表しているが、個社別の受託試験数や治療領域別実績は開示されていない。そのため製薬企業は、過去の協業実績、評判調査(レファレンスチェック)、提案内容の専門性から判断せざるを得ない。本データセットは公開情報を統合し、比較検討の起点となる構造化された企業プロファイルを提供する。