企業向けCO2排出量算定コンサルタント市場の現状
2027年3月期から上場企業に対してサステナビリティ情報開示基準が順次適用されることを受け、日本国内のCO2排出量算定コンサルティング市場は急拡大している。特にScope3を含むサプライチェーン全体の排出量算定と、TCFD・CDP・SBTといった国際的フレームワークへの対応支援に対する需要が高まっている。
市場規模は2021年度の0.7億円から2022年度には19.3億円(対前年比2,764%)へと急成長し、2023年度には57.3億円(同296%)に達する見込みだ。この急拡大の背景には、プライム市場上場企業への開示義務化があり、今後はサプライチェーンの中小企業への波及が市場拡大の鍵となる。
算定コンサルタントの選定ポイント
上場企業のサステナビリティ推進担当者が算定コンサルタントを選定する際、以下の要素が重要視される。
- Scope3算定実績と業界知見
- Scope3の15カテゴリにわたる算定には、サプライチェーンデータの収集と排出係数の適用に関する専門知識が不可欠。特に自社業界での算定実績があるコンサルタントは、業界特有のデータ収集課題や排出係数の選定に精通している。
- 国際フレームワーク対応力
- TCFD・CDP・SBT・GHGプロトコルといった国際的スタンダードへの準拠は、投資家や取引先からの信頼獲得に直結する。これらのフレームワークに精通し、申請・回答支援まで一貫して対応できるコンサルタントが求められる。
- 第三者検証との連携
- 算定結果の信頼性確保のため、第三者検証機関による保証取得が重要性を増している。検証プロセスに精通し、根拠書類の準備や指摘事項への対応を支援できる体制が評価される。
市場のプレイヤー構造
市場は大きく3つのプレイヤーに分類される。Big4系コンサルティングファーム(PwC、デロイトトーマツ、EY、KPMG)は、グローバルネットワークと監査法人との連携により、算定から検証・保証まで統合的なサービスを提供する。2022年以降、各社とも専門組織を強化し、PwCは約40名、EYのCCaSSはグローバルで3,800名以上の体制を構築している。
SaaS型算定ツールベンダー(ウェイストボックス、オンド、アスエネ、ゼロボード等)は、クラウドベースの算定プラットフォームとコンサルティングを組み合わせたサービスを展開。APIによる財務会計システム連携や自動算定機能により、算定業務の効率化を実現している。
専門コンサルティング会社(バイウィル、中電環境テクノス、三菱UFJリサーチ&コンサルティング等)は、長年の環境コンサルティング実績と専門チームにより、業界特化型の算定支援を提供する。
サプライチェーン連携の課題
Scope3算定の最大の課題は、サプライチェーン上の取引先からのデータ収集である。特にカテゴリ1(購入した製品・サービス)とカテゴリ11(販売した製品の使用)は、多数の取引先との連携が必要となる。この課題に対し、業界団体による標準化や、サプライヤー向けの算定支援プログラムが展開されつつある。
投資家はサステナビリティー項目を企業評価にすでに組み込んでいる。算定の正確性と開示の透明性が、企業価値に直接影響する時代になった。
今後の展望
2027年からの開示基準適用に向け、2025-2026年は準備期間として算定体制の構築が本格化する。また、カーボンプライシングの導入や排出権取引制度の拡大により、算定精度の向上がより重要になっていく。コンサルタントには、単なる算定支援にとどまらず、削減施策の立案やカーボンクレジット調達まで含めた包括的な支援が求められるようになるだろう。