デジタルパソロジーソリューション市場の現状
デジタルパソロジー(DP)は、ガラススライド標本全体をデジタル化したホールスライドイメージング(WSI)技術を中核とし、病理診断の遠隔化・効率化を実現します。日本のデジタルパソロジー市場規模は2024年に4,100万米ドルに達し、2033年までに1億2,810万米ドルへ成長すると予測されています(CAGR 12.83%)。
世界的にはホールスライドイメージング市場が2022年に7億2,155万米ドル、2028年には16億2,768万米ドルに達する見込みです(CAGR 12.4%)。しかし、日本は病理のデジタル化において世界から遅れをとっており、アジア諸国の中でも下位グループに位置しています。
デジタルパソロジー導入の背景と課題
日本では病理医不足が深刻化しており、常勤病理医が1名のみ、または不在の病院が多数存在します。デジタルパソロジーの導入により、病理医の移動時間・労力を削減し、遠隔地からの術中迅速診断が可能となります。
導入にはスライドスキャナー(WSIスキャナー)、データ管理システム、ビューアソフトウェアが必要です。スキャナーの価格帯は5万~30万米ドル(約550万~3,300万円)で、高額投資が日本の病理診断科にとって大きなハードルとなっています。
薬事承認と技術基準
2017年12月、フィリップス・ジャパンの「IntelliSite Pathology Solution」が国内初の薬事承認を取得しました(クラスⅡ:病理ホールスライド画像診断補助装置)。2018年8月にはクラスⅠ(病理ホールスライド画像保存表示装置)の届出も開始されました。
日本病理学会とベンダーグループは2014年にデジタルパソロジー技術基準検討会を発足し、共通画像フォーマット・ビューアソフトウェアの標準化を推進しています。異なるベンダー間のWSIスキャナーや表示ソフトウェアが混在する環境では、システムごとに独立したバリデーション試験が求められます。
AI・機械学習との連携
病理画像のデジタル化により、AI・機械学習技術を用いた自動診断支援が可能となります。組織・細胞のデジタル画像解析により、診断精度と効率が向上し、慢性疾患の早期発見や創薬研究への応用が期待されています。疾病診断用途は2025年~2030年に最も速い成長率を示すと予測されています。
主要ソリューション提供企業
日本国内では、浜松ホトニクス(NanoZoomerシリーズ)、フィリップス・ジャパン(IntelliSite)、Evident Scientific(VS-M1)、メドメイン(PidPort、ImagingCenter)、パスイメージングなどが主要プレイヤーです。
グローバル市場では、Leica Biosystems、Roche(VENTANA)、Indica Labs(HALO AP Dx、FDA認可取得)、MMI(Molecular Machines & Industries)、Inspirata(Dynamyx、マルチスキャナー対応で初のFDA認可)などが活躍しています。2025年にはEvidentがPramanaを買収してWSIソフトウェア機能を拡大し、Leica BiosystemsがIndica Labsと戦略的投資を発表するなど、業界再編が進んでいます。
日本デジタルパソロジー研究会には、医療機関だけでなく光学機器メーカーや通信・情報システムベンダーも参加し、業界全体でエコシステム構築を推進しています。