ドローンによるインフラ点検市場の現状
日本のインフラ老朽化と労働力不足を背景に、ドローンを活用したインフラ点検市場は急速に拡大している。インプレス総合研究所の調査によると、インフラ・設備点検分野の市場規模は2024年度に約1,053億円、2028年度には2,088億円に達する見込みだ。対象分野は橋梁、トンネル、ダム、送電網、基地局鉄塔、ソーラーパネル、プラント、風力発電、船舶、鉄道施設、水中構造物など15分野に及ぶ。
2019年に国土交通省の「道路橋定期点検要領」にドローン点検手法が位置づけられて以降、橋梁分野での導入が最も進んでいる。全国約71.4万橋の定期点検需要に対し、ドローンを用いることで従来3日相当の調査が2時間に短縮可能となり、3Dモデル化やAIひび割れ診断により精度も向上している。
送電網・鉄塔分野では、2025年1月から全国の送電事業者が参画するグリッドスカイウェイ有限責任事業組合が商用サービスを開始。下水道分野は2025年1月の八潮市道路陥没事故を契機に国交省が全国約1,000kmの緊急調査を要請し、狭小空間に特化した小型ドローンの需要が急増した。ソーラーパネルのO&M(運用保守)では2016年頃から商用化が進み、現在では保有者自身がドローンを運用するケースも増えている。
大手インフラ保有企業がドローン点検のノウハウを外部にサービス化して提供する動きも見られ、九電ドローンサービス(2024年法人化)や中部電力パワーグリッドのドローン事業部など、電力会社系の参入が顕著だ。NTT西日本100%子会社のジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)は2024年3月時点で4,846件の点検業務実績を有し、通信インフラ保有者のノウハウが橋梁点検市場で活かされている。
機体開発ではACSL(国産産業用ドローン、世界初のドローン上場企業)、Liberaware(2024年7月上場、狭小空間特化の小型機IBIS2)、海外製ではSkydio(米国、自律飛行・衝突回避)やElios(スイス、屋内点検特化)が採用されている。非GPS環境下での自律飛行、全方向衝突回避センサー、LTE/5G回線による遠隔制御など、インフラ点検特有の技術要件に対応した機体が求められる。
政府は2024年6月の「デジタルライフライン全国総合整備計画」で、2027年度までに関東・中国地方を中心に総延長約1万kmのドローン航路を整備し、その後全国約4万kmに拡大する計画を発表。埼玉県秩父地域では送電網に沿って150kmの航路が2025年3月に開通し、インフラ点検と物流を兼ねた活用が期待されている。