防爆機器認証取得メーカーの全体像
石油化学プラント、天然ガス処理施設、鉱業、製薬工場など、爆発性雰囲気下で稼働する産業設備においては、使用される電気機器が厳格な防爆認証を取得していることが必須要件となります。世界の防爆機器市場は2024年時点で約82億ドル規模に達し、2034年までに143億ドルへと成長する見通しです(年平均成長率5.57%)。この成長を牽引するのは、各国の安全規制強化、水素エネルギー関連投資の拡大、新興国における石油化学インフラの整備です。
主要認証制度の概要:
- ATEX(欧州):EU指令2014/34/EUに基づく強制認証。欧州経済圏での販売に必須。技術基準はIEC 60079シリーズに準拠。
- IECEx(国際):IEC(国際電気標準会議)が運営する相互認証制度。36カ国が加盟し、グローバル展開するメーカーの標準認証として普及。
- TIIS(日本):産業安全技術協会による日本国内の強制検定。労働安全衛生法に基づき、国内使用には必須。2022年よりIECEx認証機関として認定され国際整合性が向上。
- FM/UL/CSA(北米):米国・カナダ市場で要求される認証。NEC(米国電気工事規定)のClass/Division方式に対応。
- NEPSI/CNEX(中国):中国市場での強制認証。GB 3836シリーズ規格に準拠。
認証取得の実務的課題:防爆認証プロセスは開発予算の15-25%を消費し、複雑な製品では認証機関の審査待ち期間が6-12ヶ月に及ぶケースもあります。また、北米のClass/Division方式と国際規格のZone方式の違いにより、グローバルメーカーは設計・在庫・ドキュメンテーションの二重管理を強いられています。2024年4月にはATEXガイドラインが強化され、適合性評価の試験量が前年比40%増加しました。
市場セグメントと技術トレンド:製品タイプ別では、防爆格納容器(Enclosure)が市場の46%を占める最大セグメントです。一方、本質安全防爆(Intrinsically Safe)分野は年平均成長率7.9%で拡大しており、低電力センサーやIoT機器での採用が進んでいます。危険区域分類では、Zone 1(通常時は安全だが異常時に爆発性雰囲気が発生する場所)が売上の32%を占め、Zone 0(常時爆発性雰囲気が存在)向け製品は年平均成長率8.5%で成長中です。水素エネルギー分野の拡大に伴い、水素対応認証(IIB+H2グループ)製品への需要が急増しています。
地域別の市場動向:欧州では、ドイツのATEX専門知識とカーボンニュートラル投資が市場を牽引。英国はBrexit後もATEX整合規制を継続し、ABBは3,500万ドルのR&D投資を実施しました。中国・広東省は世界的な製造拠点として、Shenzhen Unicorn Lighting、Shenzhen Aoro Communication等の大規模メーカーが集積。北米ではEmerson DeltaV、Honeywell Experionが業界標準DCSとして広く採用され、Dow ChemicalはABB 800xAを全社標準化しています。
主要グローバルメーカー:Siemens、ABB、Honeywell International、Emerson Electric、Rockwell Automation、Eaton、Pepperl+Fuchs、R.STAHLなどが市場をリードしており、これらの企業はATEX/IECEx/FM/CSAなど複数の認証を取得した包括的製品ポートフォリオを展開しています。日本では中村電機製作所(防爆専業70年)、アズビル(旧・山武)、TMEIC(東芝三菱電機産業システム)、SMC、CKDなどが国内外で認証製品を供給。認証機関としては、TÜV SÜD、TÜV Rheinland、SGS(世界最多のIECEx証明書発行実績)、EUROCERT、産業安全技術協会(TIIS)などが審査・認証サービスを提供しています。