工場IoTプラットフォーム市場の概況
2023年度の国内工場デジタル化市場規模は1兆7,670億円(前年度比103.7%)に達し、製造業のIoT投資は加速しています。日本の産業用IoT市場は2025年に76億米ドル、2034年には166億米ドル(年平均成長率9.12%)に拡大する見込みです。
製造業では人手不足(直近20年で約100万人減少)や国際競争力の維持が課題となっており、設備稼働監視・予知保全・品質管理の高度化を目的としたIoTプラットフォーム導入が進んでいます。IoTプラットフォーム事業者の約50%が製造・工業用途に特化しており、上位10社が市場の58%を占める寡占化も進行中です。
主要提供企業の特徴
大手IT企業系では、NECがPLM/SCM/MESとの連携に強みを持つ「NEC Industrial IoT Platform」を、日立製作所が工場全体の横断的見える化を実現する「Lumada」と「IoTコンパス」を提供しています。富士通の「COLMINA」は設計から保守まで150種のサービスを統合し、月額15万円からのサブスクリプション型で提供されています。
製造業メーカー系では、デンソーウェーブがORiN技術により250種以上のプロトコル・1000種以上の機器に対応する「IoT Data Server」を展開。デンソー自身も世界130工場を接続する「Factory-IoTプラットフォーム」を自社開発しています。ファナックは「FIELD system」、ダイキン工業は世界中の工場で同水準情報を扱う「工場IoTプラットフォーム」を構築しています。
外資系企業では、PTCの「ThingWorx」が産業IoTプラットフォーム市場でシェア31%を獲得し、全世界1,000工場以上に導入されています。富士通がThingWorxとVuforia ARを自社フレームワークに統合するなど、日本企業との協業も進んでいます。
中堅・専門企業では、ウイングアーク1stがテンプレート型の「MESOD」で低コスト・短期導入を実現。TDIプロダクトソリューションはMES運用から開発まで総合サポートを提供しています。電通総研、ソラコム、TAKEBISHI(DeviceXPlorer OPC Server)なども特定ニーズに対応した製品を展開しています。
技術トレンドとプロトコル対応
工場IoTではOPC-UAが標準プロトコルとして広く採用され、ほぼすべての近代的な機械・PLC・IoTゲートウェイがサポートしています。MQTTはネットワーク品質が低い環境や大量デバイス接続に適しており、OPC-UA over MQTTとして両者を組み合わせた統合アプローチも普及しています。
日本ではSCADAシステムの導入が欧米比で遅れており、MESとPLCを直接接続するケースが多く見られますが、5Gによる超低遅延通信やAI活用の進展により、SCADAとMESの連携強化が期待されています。EtherNet/IP、CC-Link、FINS、MCプロトコルなど日本製PLCの独自プロトコルにも対応するマルチベンダー型プラットフォームが主流です。
業界横断コンソーシアムの動向
三菱電機、オムロン、NEC、日立など8社が幹事として参画した「エッジクロスコンソーシアム」は、企業・産業の枠を超えた共通ソフトウェアプラットフォーム構築を目指しましたが、2024年11月に終了が発表されました。この動きは、各社が独自プラットフォームに注力する方向性を示唆しています。
選定時の考慮事項
パナソニック インフォメーションシステムズは、IoTプラットフォーム選定時の10のチェックポイントとして、対応プロトコルの多様性、既存MES/ERPとの連携性、エッジ処理能力、クラウドネイティブ対応、セキュリティ、スケーラビリティ、AI/アナリティクス機能、保守サポート体制、TCO(総所有コスト)、ベンダーロックインリスクを挙げています。
特に日本の製造業では、異なるメーカーの既存設備が混在するケースが多いため、マルチプロトコル対応と後付けIoT化の容易さが重視されます。また、グローバル展開を見据えた多拠点データ統合機能や、クラウドとエッジのハイブリッド構成も重要な選定基準となっています。