危険物倉庫市場の拡大とニーズ
国土交通省の倉庫統計季報によると、危険品倉庫の床面積は2021年6月の642千㎡から2023年6月には780千㎡(推定)へと年率約10%で拡大しています。この成長の背景には、半導体製造で使用される高圧ガス、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池の電解液、医薬品・化粧品原料など、危険物に該当する材料の需要増加があります。
化学品メーカーや商社の物流担当者にとって、消防法に適合した危険物倉庫を持つ事業者の選定は重要な課題です。消防庁のデータは許可台帳形式で検索性に欠け、空きスペースや取扱品目での絞り込みができないため、事業者選定に時間がかかる現状があります。
主要事業者と業界動向
日本危険物倉庫協会には約70社の事業者が加盟しており、全国各地に危険物倉庫を展開しています。近年、物流大手による投資が加速しており、山九は全国13拠点で総延床面積約26,800㎡の危険物倉庫を運営し、2023年には大阪府高石市に関西最大級の8,000㎡の施設を開設しました。NRS(旧日陸)は日本最大級の規模を誇り、-20℃から+25℃までの温度管理に対応。エクシングは2023年に日本危険物倉庫協会に入会し、埼玉県久喜市に第4類対応の新倉庫を竣工しました。
危険物は消防法により第1類(酸化性固体)から第6類(酸化性液体)まで分類され、第4類の引火性液体(ガソリン、灯油、アルコール類など)が最も取扱量が多い類別です。各倉庫は床面積1,000㎡以下、耐火構造、避雷設備(指定数量10倍以上の場合)などの厳格な基準を満たす必要があります。
温度管理・特殊機能への対応
化学薬品の中には温度変化で品質が劣化するものがあり、定温管理(0℃~15℃)や低温管理に対応した危険物倉庫のニーズが高まっています。山九の関西ケミカルセンターでは8棟のうち4棟が温度管理品に対応し、澁澤倉庫の芳賀倉庫は空調システムを設置した高機能倉庫として運営されています。また、保税倉庫機能を併設する事業者も多く、輸入化学品の荷卸しから保管・配送までワンストップで対応可能です。
2024年12月にはリチウムイオン電池保管に関する規制緩和が消防庁より公表され、2025年5月には危険物倉庫での移動ラック導入が正式に解禁されるなど、規制・技術面での進展も見られます。業界では「危険物倉庫が不足している」との声が多く、建設・運営・保守の高コストが供給拡大の障壁となっています。