RoHS・REACH規制対応における分析試験所の選定
EU市場への製品輸出において、RoHS指令(電気電子機器中の有害物質規制)とREACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限)への適合証明は必須要件です。2019年のRoHS改正により規制対象が10物質に拡大、REACHのSVHC(高懸念物質)は2025年11月時点で251物質に達しており、製造業の品質保証部門は適切な分析試験所の選定が重要な課題となっています。
ISO/IEC 17025認定を取得した試験所は、分析手法の技術的妥当性と品質管理体制が国際的に認められており、認定試験所が発行する試験報告書は欧州当局への提出資料として高い信頼性を持ちます。ただしRoHS指令自体はISO 17025認定を必須要件とはしていないため、分析目的(社内検証用か、顧客提出用か、EU当局向けか)に応じて試験所を使い分ける企業も存在します。
| 分析項目 | 規制物質数 | 主な分析手法 | 標準納期 |
|---|---|---|---|
| RoHS 重金属4元素 | Cd, Pb, Hg, Cr(VI) | XRFスクリーニング + ICP | 3〜5営業日 |
| RoHS 臭素系難燃剤 | PBB, PBDE | GC-MS | 5〜7営業日 |
| RoHS フタル酸エステル | 4物質(2019年追加) | GC-MS, HPLC | 5〜7営業日 |
| REACH SVHC | 251物質(2025年11月) | GC-MS, LC-MS | 10〜15営業日 |
日本国内には公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)の認定を受けた化学試験所が271機関存在し(2013年統計)、そのうちRoHS/REACH分析に対応する試験所は推定で180機関程度と見られます。主要な認定試験所には、グローバル分析企業の日本法人(ユーロフィン、SGS、テュフラインランド等)と、国内専業の環境分析企業(東海テクノ、産業分析センター、内藤環境管理、島津テクノリサーチ等)が含まれます。
試験所選定の実務ポイント: 初回取引では認定範囲証明書の確認が必須です。「RoHS分析対応」を謳っていても、実際のJAB認定範囲は重金属のみで臭素系難燃剤は認定外、といったケースがあります。また海外認定機関(UKAS、A2LA等)の認定を持つ試験所もあり、グローバルサプライチェーンでの証明書受理可否を事前確認することが推奨されます。
- 分析精度と費用のトレードオフ
- XRF(蛍光X線分析)によるスクリーニングは迅速かつ低コスト(1検体5,000円〜)ですが、閾値付近の材料では偽陽性・偽陰性のリスクがあります。ICP-MS等の精密分析(1検体15,000円〜)は確度が高い反面、納期とコストが増加します。リスクベースアプローチとして、スクリーニングで陽性となった材料のみ精密分析を行う2段階方式を採用する企業が多数です。
- REACH SVHCの段階的対応
- SVHC全251物質の網羅分析は1検体あたり20万円以上となるため、部材の用途・組成から対象物質を絞り込む「ターゲット分析」が実務的です。多くの試験所は業界別の推奨パッケージ(電子部品向け、樹脂成形品向け等)を提供しています。
環境省の統計によると、国内環境産業の市場規模は2023年時点で130兆円を超え、そのうち環境分析・測定分野も持続的な成長を示しています。RoHS/REACH規制の厳格化とサプライチェーンの透明性要求の高まりを背景に、分析試験所への需要は今後も拡大する見通しです。