産業設備赤外線診断の市場動向と技術基盤
赤外線サーモグラフィによる設備診断市場は、予防保全・予知保全の需要拡大を背景に急成長している。グローバルのサーモグラフィー分析サービス市場は2024年に70億米ドル、2032年までに115億米ドル(CAGR 6.3%)に達すると予測される。日本国内でも、プラント・工場の老朽化と人手不足により、非破壊・非接触で異常検知できる赤外線診断への需要が高まっている。
電気設備診断の実務と検出対象
電気設備における赤外線診断は、過熱が故障の第一兆候である原理を活用し、以下の異常を検出する:
- 緩んだ接続部の過熱
- 不平衡回路による負荷集中
- 遮断器・ヒューズ劣化
- 開閉装置(スイッチギア)の損傷
- 過負荷回路の温度上昇
NFPA 70B(米国電気保守基準)では、重要電気設備に対し6ヶ月ごとの赤外線点検を義務化しており、NACBI(米国商業ビル検査協会)も年1回の予防保全点検を推奨している。日本でも電気設備技術基準や労働安全衛生法の観点から、稼働中設備の活線診断ニーズが拡大している。
主要サービス提供企業の技術仕様
| 企業タイプ | 使用機器例 | 診断範囲 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| プラントメーカー系 | FLIR/Testo高精度カメラ | 自社設備+受託診断 | 設備構造熟知、保全契約セット |
| 専業診断企業 | 640×480px以上高解像度機 | 電気・機械・建築全般 | 中立評価、複数メーカー対応 |
| 建設コンサル系 | ドローン搭載型含む | 建築外壁+設備診断 | 法定点検(特定建築物定期報告)対応 |
| グローバル認証機関 | 超音波併用型 | 国際基準適合診断 | ISO/IEC準拠レポート |
診断精度を左右する機器性能指標
産業用赤外線診断では、解像度(640×480px以上)と熱感度(NETD 40mK未満)が精度を左右する。遠距離・高所設備の診断では、望遠レンズと高解像度の組み合わせが不可欠であり、ドローン搭載型では振動補正機能も重要となる。
「赤外線診断は、設備停止による機会損失を防ぎながら、火災・停電リスクを事前に排除できる唯一の手段です。初期投資の数倍のコスト削減効果が実証されています。」
— SEAM Group (Predictive Maintenance Specialist)
契約形態と費用構造
単発診断の場合、電気設備1箇所あたり数万円〜、建築物外壁では㎡単価120〜350円が相場。ただし、年間保全契約により定期診断を組み込むことで、単価を抑えつつ異常の早期発見率を高める企業が増えている。報告書は通常診断後1〜2週間で納品され、優先度別の是正推奨事項が記載される。
グローバル展開と地域特性
北米・欧州では労働安全規制が厳格で、認定サーモグラファー(Level I/II/III)資格保有が契約条件となるケースが多い。日本では建築基準法12条(特定建築物定期報告)や労働安全衛生法に基づく点検需要が中心だが、今後はISO 55000(アセットマネジメント)準拠を求める大手プラントの引き合いが増加すると予測される。