IT機器処分(ITAD)業者選定の実務ポイント
企業のIT資産処分において、データ漏洩リスクと環境負荷の両面から適正な業者選定が求められています。日本のITAD市場は2024年時点で約1,065億円規模に達し、2033年にかけて年平均8.1%の成長が見込まれています。情報システム部門や総務部のIT資産管理担当者が直面する課題は、「確実なデータ消去」「コンプライアンス対応」「コスト最適化」の三点です。
データ消去の認証体制を確認することが最優先です。ADEC(適正消去実行証明協議会)認証、ISO 27001(情報セキュリティマネジメント)、コモンクライテリア認証(ISO 15408)などの第三者認証を取得している業者は、監査可能な消去プロセスを保証します。消去方法には上書き消去(NIST SP-800-88準拠)、物理破壊、磁気消去があり、用途に応じた選択が必要です。
業界団体認定の確認も重要な判断材料です。一般社団法人日本ITAD協会(JITAD、旧RITEA)の認定事業者は、適正な設備とサービス提供能力を第三者機関が確認しています。同協会は2006年設立以来、情報機器のリユース・リサイクルに係る事業者育成と認知度向上に取り組んでおり、認定事業者は協会指定のデータ消去ソフトウェアを使用し情報漏洩防止に努めています。
リユース・買取対応の有無は処分コストに直結します。まだ使用可能なIT機器を適正にリマーケティングする業者を選ぶことで、処分費用の削減や買取による資産回収が可能になります。株式会社ゲットイットは国内300社・海外にも販売チャネルを持ち、累計96万台超の実績から最適な再販価格を提案できる体制を構築しています。ただし日本ではデータ消去への理解不足がリユース普及の壁となっており、確実な消去証明とセットでの買取サービスが求められています。
対応規模と全国展開も選定基準です。大量のPC・サーバーを一括処分する場合、処理能力(台/日)や全国対応可能な拠点網が必要です。データライブ株式会社は埼玉県久喜市に4,600m²の拠点を備え1日4,000台のデータ消去能力を保有し、KOEI JAPAN株式会社は全国47都道府県で回収対応しています。パシフィックネットは業界唯一の上場企業として全国7拠点(札幌・仙台・東京・浜松・名古屋・大阪・福岡)にテクニカルセンターを併設し、国内トップクラスの実績を誇ります。
証明書発行と監査対応は内部統制・外部監査で必須です。データ消去証明書、産業廃棄物管理票(マニフェスト)、処理完了報告書など、後日の監査に耐えうる文書体系を提供する業者を選ぶべきです。リース満了時にはリース会社への報告義務もあるため、書類の完備は必須要件となります。
SDGsと脱炭素経営の観点からも、ITADは注目されています。適正なリユース・リサイクルはScope 3排出削減に貢献し、サーキュラーエコノミー推進の一環として位置づけられます。日本ITAD協会もSDGs達成への貢献を掲げており、環境配慮型の電子廃棄物管理を義務付ける規制への対応が業者選定の要素になっています。
業者選定の実務では、複数社から相見積もりを取得し、「消去方法と認証」「証明書の種類」「処理期間」「買取価格または処分費用」「オンサイト消去対応の可否」を比較することが推奨されます。特に機密性の高いサーバーやストレージについては、オンサイト(自社内)でのデータ消去サービスを提供する業者も選択肢に入れるべきです。