日本のM&Aアドバイザリー市場と企業選びの実態
2026年度に国が中小企業M&Aアドバイザー資格制度を創設する背景には、約3,000事業者が乱立するM&A仲介市場の質の担保がある。中小企業庁の統計によれば、2025年までに70歳を超える経営者は約245万人にのぼり、うち半数の127万人が後継者未定という深刻な事業承継問題に直面している。
M&A仲介会社の選択において、最も重要な判断軸は「仲介型」と「アドバイザリー型(FA)」の違いである。仲介型は売り手と買い手の間に立ち中立的にマッチングを図るため、スピード成約が期待できる一方、アドバイザリー型は依頼者の一方のみと契約し利益最大化を追求する。事業承継の場合は前者、戦略的M&Aでは後者が選ばれる傾向にある。
料金体系は各社で大きく異なり、着手金・中間金の有無、成功報酬の算定基準(株価レーマン方式か純資産ベースか)、最低報酬額の設定などが交渉の余地を生む。2022年のM&A市場は件数ベースで4,304件と過去最高を記録した一方、金額ベースでは11.4兆円と前年比31.6%減となっており、中小規模案件の増加と大型案件の減少という構造変化が見て取れる。
専門性の観点では、公認会計士・税理士出身者が主体の会社は企業価値評価やデューデリジェンスに強みを持ち、証券会社系は買い手ネットワークの広さが特徴となる。地域密着型は地方金融機関との連携により地元企業の事業承継に強く、独立系は売り手・買い手双方からの報酬体系により効率的なマッチングを実現している。
2024年には複数の仲介会社が東証グロース市場へ新規上場を果たし、業界の透明性と信頼性向上が加速している。買い手企業とのネットワーク規模、業界特化型の知見、PMI(統合後支援)の提供有無など、単なる成約仲介を超えた付加価値が企業選定の新たな基準となりつつある。