医療機器受託製造の選定で見落とされがちな本質
新規医療機器の量産委託先を探す際、多くの生産技術部門は展示会やカタログに頼るが、日本国内には薬機法対応からFDA申請支援まで一貫対応できる受託企業が100社以上存在する。ISO13485認証は前提条件に過ぎず、真に重要なのは委託企業の開発フェーズに応じた柔軟性だ。
医療機器のOEM(Original Equipment Manufacturing)とODM(Original Design Manufacturing)の違いは製造範囲にある。OEMは委託元が提供した設計図面に基づく製造のみを担うのに対し、ODMは製品企画・設計開発から薬事申請、量産まで一貫して受託する。近年は開発製造受託機関(CDMO)として、QMS構築支援や海外規制対応まで含めたトータルソリューションを提供する企業が増加している。
日本の医療機器市場は約4.4兆円規模で、国内生産額は2.6兆円を超える。しかし国内市場の輸入依存度は高く、グローバル展開を見据えた受託企業の選定が競争力を左右する。静岡県袋井市のカーディナルヘルスは50年以上の実績を持ち、新生児用中心静脈カテーテルなど高難度製品で韓国等への輸出実績がある。岡山県津山市のJOHNANは関西圏100社超との取引実績を活かし、ウェアラブルデバイスやIVD検査装置に特化している。
| 受託範囲 | OEM | ODM | CDMO |
|---|---|---|---|
| 製品企画 | - | ○ | ○ |
| 設計開発 | - | ○ | ○ |
| 試作・量産 | ○ | ○ | ○ |
| 薬事申請 | - | △ | ○ |
| QMS構築支援 | - | - | ○ |
クラス分類による受託難易度も考慮すべきだ。高度管理医療機器(クラスⅢ・Ⅳ)は第一種医療機器製造販売業許可が必須で、対応可能企業は限られる。寺崎電気産業は累計4万台超の医療機器を国内外に供給し、臨床検査機器(IVD)での実績が厚い。コスミックエムイーは電子制御部の回路設計・ファームウェア開発に強みを持ち、クラスⅣまでの薬事申請を自社で完結できる。
委託先選定の3つの視点: ①開発フェーズに応じた受託範囲の柔軟性、②目標市場の規制対応実績(国内薬機法/FDA/CE)、③量産移行時のスケーラビリティ。単なる製造能力ではなく、事業パートナーとしての戦略的価値を見極める。
海外展開を視野に入れる場合、21 CFR Part 820(FDA QSR)やMDR(欧州医療機器規則)への対応実績が鍵となる。日本精密測器は血圧計分野で世界トップクラスの供給実績を持ち、インドネシア・中国に生産拠点を展開する。NISSHAは京都のクラス10,000クリーンルームで製造から滅菌・出荷まで一貫対応し、グローバルサプライチェーンに強みを持つ。
- 小ロット試作対応
- 株式会社オーイーエムシステムやDr.Japanは体外診断装置等で小ロット生産から大量生産まで柔軟に対応。プロトタイプ検証フェーズでのスピード感が評価される。
- EMC・電気安全性試験
- 山陽精工は形式試験サポートや医療機器規格適合支援に強みを持ち、IEC 60601シリーズ等の国際規格対応で実績がある。
- クリーンルーム設備
- 滅菌医療機器の製造にはクラス100~10,000のクリーンルームが必須。設備投資の有無は委託コストと品質に直結する。
医療機器受託製造市場は2028年までCAGR 5%超で成長し、820億ドル規模に達する見通しだ。異業種からの新規参入も増加しており、自動車部品メーカーの精密加工技術や電子機器メーカーのファームウェア開発力を医療機器分野に転用する動きが活発化している。委託元にとっては選択肢の多様化がメリットだが、医療機器特有の品質管理体制(QMS)や薬事規制への理解度を見極める必要がある。