医用画像AI市場の現状
日本国内の医用画像診断支援AI市場は2018年のエルピクセル初承認以降、急速に成長を遂げており、2024年3月時点で診断支援型SaMD(プログラム医療機器)の薬事承認は456件に達しています。2029年度には市場規模が60億円に到達すると予測されており、医師の読影負担軽減と診断精度向上という2つの明確な価値提供を軸に拡大しています。
2024年度から施行された医師の時間外労働規制も普及を後押しし、大学病院から診療所まで幅広い層の医療施設での導入が進んでいます。特筆すべきは、2024年度診療報酬改定で大腸内視鏡AIが保険加算対象となったことで、医療現場での実用性が制度面からも裏付けられた点です。
主要な対応領域
- 脳神経領域
- MRI画像からの脳動脈瘤検出、脳卒中診断支援。エルピクセルのEIRL Brain Aneurysmが2019年に国内初のディープラーニング脳MRI診断支援として承認を取得。
- 胸部領域
- CT・X線画像からの肺結節・肺炎検出。COVID-19肺炎検出AIが2020年に緊急承認されたことで、パンデミック対応としての有用性も実証。
- 消化器領域
- 内視鏡画像からのポリープ・がん検出と腫瘍性鑑別。サイバネットシステムのEndoBRAINシリーズやオリンパス・富士フイルムの製品群が臨床現場で稼働中。
- 眼科領域
- 眼底画像からの糖尿病網膜症・緑内障検出。AIメディカルサービスなどが遠隔読影サービスと組み合わせて展開。
開発企業の類型
市場には大きく3つのプレイヤー層が存在します。第一に、医療機器メーカー系(富士フイルム、キヤノンメディカル等)は既存モダリティとのシームレス連携を強みに漸進的イノベーションを推進。第二に、大学発ベンチャー(エルピクセル、メドメイン等)は最先端AI技術と臨床データを活用した破壊的イノベーションを指向。第三に、IT・ソフトウェア企業(サイバネットシステム、Preferred Networks等)は汎用AI技術の医療応用で差別化を図っています。
技術的特徴と差別化要因
各社のAIアルゴリズムは、いずれもディープラーニング(畳み込みニューラルネットワーク)を基盤としていますが、差別化は学習データの質と量、臨床フィードバックループの設計、ワークフロー統合の緻密さで決まります。例えばエルピクセルのEIRLシリーズは総解析件数1200万件超のリアルワールドデータで継続的に精度向上を図り、EndoBRAINは病変検出感度96%・特異度98%という高精度で医師の見落とし防止に貢献しています。
また、日本医用画像データベース(J-MID)が2018年に設立され、5億枚超のCT・MRI画像が集約されたことで、国内企業の開発環境は大きく改善しました。このインフラがあるからこそ、日本企業はグローバル競争でも優位性を持ち得ます。
選定時の考慮事項
病院の放射線科部長や医療機器メーカーの研究開発部門が開発パートナーを選定する際、以下の点が重要です:薬事承認取得実績(SaMDとしての市販後調査体制含む)、既存PACS・モダリティとの互換性、導入後の精度検証プロトコル、医師教育プログラムの有無。単なるアルゴリズム精度ではなく、臨床現場でのトータルな診断品質向上に寄与するかが問われます。