洋上風力発電O&Mサービス市場の概要
洋上風力発電のO&M(運転・保守)市場は、世界的に急成長している分野です。グローバル市場は2025年に約52億ドル、2034年には125億ドルに達する見込みで、年平均成長率(CAGR)は10.27%です。欧州が市場シェアの50%以上を占め、英国・ドイツ・デンマークが先行しています。一方、アジア太平洋地域は最も急成長しており、中国は2030年までに洋上風力容量50GWを目指し、O&M市場は約30億ドル規模に達すると予測されています。
日本市場も拡大局面にあり、2030年度には洋上風力発電市場が9,200億円規模(矢野経済研究所)、O&Mは風力発電ライフサイクルコストの約36%を占めることから、国内O&M市場は数千億円規模に成長する見通しです。経済波及効果を含めた風力全体では2030年に5兆円を超えるとされ、雇用創出効果は8〜9万人程度(10GW導入時)と見込まれています。
国内O&Mサービス会社の特徴
北拓は日本最大のサードパーティ系メンテナンス企業で、国内約2,600基の風車の80%にサービスを提供しています。全風車メーカー対応の遠隔監視システム「MiScout system」を運用し、2024年1月には商船三井と資本提携しました。秋田・千葉の第1ラウンド洋上風力ではGEのもとで運転保守を請け負います。
JFEエンジニアリングは陸上風力で約20年の実績を持ち、欧州風車メーカーとのライセンス契約によりグローバルリモートセンター(GRC)で24時間監視を提供しています。
日鉄エンジニアリングは、ドイツのDeutsche Windtechnik、深田サルベージ建設と協業し、洋上風力O&Mの実施体制を構築。2025年11月にはアチハ(延べ500基以上のメンテナンス実績、100人超の技術者)と協業を開始しました。
ウィンド・パワー・エンジニアリングは洋上・陸上双方でO&M業務を展開しています。
CTV(人員輸送船)運航会社
東京汽船は日本のCTVパイオニアで、2013年に福島浮体式向け「JCAT ONE」を運航開始。秋田では2021年に4隻を建設用に投入し、地元3社と合弁でO&M用CTV 2隻を保有しています。
商船三井は台湾の大統海運と合弁で「TSS PIONEER」(アジア初の新造SOV)を運航し、台湾・大彰化洋上風力のO&M支援を実施。CTV「KAZEHAYA」も保有しています。
日本郵船は2023年6月から北海道石狩湾沖(112MW、14基)向けにCTVを建造・運航し、秋田県沖でも長期使用契約を締結しています。
国土交通省は2030年に約50隻、2040年に約200隻のCTVが必要と想定しており、国産CTV開発への期待が高まっています。
グローバル主要プレーヤー
Vestas/MHI Vestasは、2020年に秋田能代向け33基(V117-4.2MW、最長20年O&M契約)、2023年に北九州響灘向け238MW(V174-9.5MW)を受注。MHI Vestas Japan(MHI 70%、Vestas 30%)が2021年に営業開始し、日本の地震・台風に対応した設計最適化と技術サポートを提供しています。
Siemens Gamesaは市場シェア12%超で、タービン稼働率98%を実現。Siemens、Gamesa、Senvion、Bonus、Adwenのレガシー技術をカバーし、130GW以上の風力容量(うち洋上8GW超)を設置しています。2025年にはドイツGennaker洋上風力(976.5MW、SG 14-236×63基)で長期保守契約を締結しました。
GE Vernova(旧GE Renewable Energy)は、Haliade-Xシリーズを含む約57,000基のタービン(120GW超)を設置し、予知保守やドローン・ロボット活用を推進しています。
Deutsche Windtechnikは2007年から事業を開始し、13GW超のサービス契約を保有。Vestas、Siemens、Nordex、Senvion、Enercon、GE等あらゆるメーカーに対応し、基本契約からフルメンテナンス、カスタム契約まで柔軟に提供しています。台湾Hai Long洋上風力など海外実績も豊富です。
Global Wind ServiceはFred. Olsen傘下で従業員1,700人超。欧州を主力とし、米国・アジア太平洋(日本を含む40カ国以上)に展開。RWE(英国・ドイツ)やポーランドBaltic Power(Vestas V236、1.2GW)で実績を積んでおり、日本ではDENZAI E&Cと提携しています。
Ørstedは世界最大の洋上風力デベロッパー(市場シェア16%、運転中容量10.2GW)で、自社O&M拠点を台湾・台中港(アジア太平洋最大、大彰化2.4GW対応)や英国Burbo Bankに設置し、CWind(ハイブリッドSES-CTV)やBGB Scaffolding等のパートナーと協業しています。
技術トレンド
O&M市場では、AI駆動型予知保守(Envisionは2025年に3GWカバー)、ドローン活用(60%増加)、遠隔状態監視(新規風力発電所の52%に導入)が加速しています。Certekは2025年にGEV Wind Power(年300件超のブレードサービス、グループ売上1.35億ドル)を買収し、専門サービスを強化しました。