PCI DSS準拠決済サービスプロバイダーとは
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は、VISA、MasterCard、American Express、Discover、JCBの国際カード5ブランドが共同策定したクレジットカード情報セキュリティの国際基準です。カード情報を保存・処理・伝送する決済代行会社やサービスプロバイダーは、年間取引量に応じて認証レベル1〜4の準拠が求められます。
2025年3月にはPCI DSS v4.0.1への完全移行が義務化され、日本では経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」により、EC事業者は「カード情報の非保持化」またはPCI DSS準拠のいずれかの対応が必須となりました。準拠事業者と契約することで、EC事業者は自社でのPCI DSS認証取得という膨大なコスト・時間を回避できます。
認証レベルの違い
- Level 1(最高レベル)
- 年間600万件以上のVisa/MasterCard取引、または250万件以上のAmEx取引を処理する事業者。認定セキュリティ評価機関(QSA)による年次監査とROC(Report on Compliance)提出が必須。GMOペイメントゲートウェイ、DGフィナンシャルテクノロジー、ゼウス、Stripeなど大手決済代行はこのレベルです。
- Level 2
- 年間100万〜600万件の取引を処理。QSA監査またはSAQ提出。
- Level 3/4
- 取引量が少ない小規模事業者向け。自己評価アンケート(SAQ)による準拠確認。
日本市場の状況
日本国内の決済代行市場は中堅中小含め300社超が競合する巨大市場です。2024年度のネット決済代行サービス市場規模は6,812億円、2029年度には1兆2,904億円に達すると予測されています(デロイト トーマツ ミック経済研究所)。市場拡大の背景には、PayPayなどID決済の普及と、PCI DSS対応業務のアウトソース化需要があります。
日本国内で訪問審査が可能なQSA(認定審査機関)は20社以上に増え、BSI Management Systems Japan、ICMSなどが活動しています。日本カード情報セキュリティ協議会(JCDSC)と日本クレジット協会(JCA)がPCI SSCと連携し、国内での準拠推進を支援しています。
主要プレーヤー
国内トップシェアを争うのはGMOペイメントゲートウェイとSBペイメントサービスで、両社ともPCI DSS v4.0.1に完全準拠。DGフィナンシャルテクノロジー(旧ベリトランス)は日本で初めてPCI DSS準拠を達成した先駆者で、年間11.8億件・6.2兆円の決済処理を行っています。ゼウスは2007年からPCI DSS準拠を継続し、現在v4.0.1に対応。
グローバル勢ではStripeとPayPalがLevel 1認証を保持し、日本でもサービス展開。楽天ペイはPCI DSS v3.2.1準拠、PaidyはLevel 1準拠を明示しています。AWS、Google Cloud、Microsoft AzureなどクラウドインフラもLevel 1認証を取得し、決済サービスの基盤を提供しています。
Visa Global Registryの活用
Visa Global Registry of Service Providers(visa.com/splisting/searchGrsp.do)は、VISAが公開するPCI DSS準拠プロバイダーの検索データベースです。企業名、所在地、認証日、QSA名で検索でき、月次更新されます。アジア太平洋(AP)地域でフィルタリングすれば日本のプロバイダーを抽出可能です。MastercardもSDP Compliant Service Provider Listを公開しています。
選定時のチェックポイント
- 認証レベルの確認: Level 1認証は最も厳格な監査を経ているため信頼性が高い
- 認証バージョン: v4.0.1対応済みか(2025年3月以降義務化)
- QSAの信頼性: PCI SSC認定の正規QSAによる監査か
- Visa/Mastercard Registry登録: 国際カードブランドの公式認定リストに掲載されているか
- 取扱高・実績: 年間処理件数・金額が大きいほどシステム安定性が高い
- 非保持・非通過対応: EC事業者側でカード情報を扱わないソリューションがあるか
- 多様な決済手段: クレカ以外にQR決済、電子マネー、後払い等に対応しているか
重要: PCI DSS準拠は年次監査が必須です。AOC(Attestation of Compliance)の有効期限は1年間のため、継続的な更新が行われているかを確認してください。過去の認証だけでは不十分です。
非保持化という選択肢
日本では「カード情報の非保持化」がPCI DSS準拠の代替手段として認められています。決済代行会社が提供するトークン決済やリダイレクト型決済を利用すれば、EC事業者のシステムにカード情報が一切通過・保存されないため、PCI DSS監査対象外となります。GMOペイメントゲートウェイ、DGフィナンシャルテクノロジー、ゼウスなど主要事業者は全て非保持化ソリューションを提供しています。