医薬品シリアライゼーション・トレーサビリティシステムの選定基準
製薬企業が直面する最大の課題は、米国DSCSA(Drug Supply Chain Security Act)やEU FMD(Falsified Medicines Directive)といった複数地域の規制に同時に対応する必要があることです。2024年時点でDSCSAは段階的免除期限を迎えており、製造業者・再包装業者は2025年5月、卸売業者は2025年8月、26名以上の従業員を持つ調剤施設は2025年11月、小規模調剤施設は2026年11月が最終期限となっています。一方EU FMDは「調剤時点での真正性検証」モデルを採用しており、DSCSAのような全サプライチェーン追跡とは設計思想が異なります。
この違いにより、グローバル展開する製薬企業は複数の規制に同時対応可能なLevel 4(ISA-95標準)エンタープライズソリューションを導入する必要があります。主要ベンダーは、TraceLink(AWSベースのクラウドソリューション)、Systech(大手製薬企業の80%が採用)、Optel Group(機械ビジョンとソフトウェアの統合型)、Antares Vision(rfxcel買収により米国市場強化)、SEA Vision(Zenith Technologiesとの協業で200ライン以上の実績)など約35社が存在します。
選定時に重視すべき要素は以下の通りです:
| 評価項目 | 重要度 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 規制対応範囲 | 最高 | DSCSA, EU FMD, 中国, 韓国, 中東など展開予定市場の全規制に対応しているか |
| ISA-95準拠レベル | 高 | Level 3(ライン制御)とLevel 4(企業システム)の両方を提供しているか |
| 集約化(Aggregation)対応 | 高 | ケース・パレット単位の階層的シリアライゼーションに対応しているか |
| 導入規模実績 | 中 | 複数サイト・数百ライン規模の実装経験があるか |
| EPCIS準拠 | 中 | DSCSA要件のEPCISイベント交換に対応しているか |
市場調査会社Grand View Researchによれば、医薬品シリアライゼーションサービス市場は2024年の約148億ドルから2030年には294億ドルへとCAGR 12.28%で成長する見込みです。この成長は、低・中所得国における偽造医薬品が全体の約10%を占めるという深刻な状況(米国FDA 2024年データ)への対策需要によるものです。
「規制対応を後回しにすることは、サプライチェーン全体のリスクとなる。DSCSAの最終期限まで待つのではなく、今から段階的に導入を進めるべきだ」— LSPedia DSCSA Compliance Guide
現在のトレンドとして、ブロックチェーン技術の統合(バーレーンのTraceability Hubなど)、AIによる例外処理の自動化(Antares Vision DIAMINDなど)、患者向けスマートフォン検証が実用化されつつあります。ベンダー選定においては、単なる規制対応だけでなく、将来的な技術統合の柔軟性も考慮すべきです。