グローバル・レアアースサプライチェーンの現状
2025年時点で、世界のレアアース生産量の約60%を中国が占め、精製プロセスでは90%のシェアを持つ。この極端な集中は、電子部品メーカー・磁石メーカー・触媒メーカーにとって深刻な調達リスクとなっている。特に2025年4月の中国による輸出ライセンス制導入(Sm, Gd, Tb, Dy, Lu, Sc, Y対象)以降、非中国サプライヤーの戦略的重要性が急激に高まった。
バリューチェーンの分断:鉱山採掘(Mining)→選鉱(Beneficiation)→抽出(Extraction)→分離(Separation)→金属化(Metallization)→磁石製造(Magnet Production)という6段階のうち、中国外で全工程を実行できる企業は極めて限定的。Lynas Rare Earths(豪)とMP Materials(米)が例外的に垂直統合を進めているが、重希土類(Dy, Tb等)の商業生産は2025年時点で中国外に存在しない。
軽希土vs重希土の供給格差:NdPr(ネオジム・プラセオジム)等の軽希土類は豪米で商業生産が確立しつつあるが、EV駆動モーター用高性能磁石に不可欠なDy(ジスプロシウム)・Tb(テルビウム)等の重希土類は依然として中国依存が続く。Ilukaの2027年稼働予定Eneabba精製所が、中国外で初めて軽重両方の分離REO生産を実現する見通し。
政府支援と地政学:米国は2025年に国防生産法(DPA)下で4.39億ドルを投じ国内REEサプライチェーン構築を加速。豪米は2025年10月に総額85億ドル規模の重要鉱物協定を締結し、各国が最低10億ドルを拠出。EUは2024年重要原材料法により2030年までに中国依存度引き下げを法制化。こうした政策支援により、2020年代後半に非中国サプライヤーからの調達が実務レベルで可能になる見込み。
オフテイク契約の戦略的意義:Arafuraは既にHyundai、Kia、Siemens Gamesaとオフテイク契約を締結。Tesla、BYD、Toyotaは中国のJL MAG Rare-Earth(2024年磁石ブランク生産2.93万トン)から調達中。電子部品メーカーの購買担当にとって、2026-2027年の供給契約交渉タイミングが調達先多元化の重要な窓となる。