地方銀行によるスタートアップ支援が地域経済の新たなエンジンに
地方銀行によるスタートアップ支援は、従来の融資業務を超えた戦略的な取り組みとして急速に拡大している。2024年には全国40行以上の銀行・銀行系VCが連携するBANK SUMMITが初開催され、地銀がスタートアップエコシステムの重要なプレイヤーとして台頭していることを示した。
背景にあるのは、地方圏における深刻な起業家不足だ。2021年の新規上場企業139社のうち、東京都本社が63.3%を占め、首都圏シェアは7割を超える一方、26道県ではゼロという現実がある。この危機感が、地銀を「地域からユニコーンを生み出す」という挑戦へと駆り立てている。
静岡銀行は5年後にベンチャーデット残高1000億円を目指し、横浜銀行はCVCファンドを通じて神奈川・東京町田エリアの創業支援を強化。きらぼし銀行は羽田にインキュベーション拠点を構え、国内外のスタートアップとグローバル連携を図る。広島銀行の「広島オープンアクセラレーター」は2019年から6年連続で開催され、累計32件の事業化検討を実現した。
支援形態も多様化している。ベンチャーデット(新株予約権付融資)により赤字企業にも融資が可能になり、CVCファンドを通じたエクイティ投資、アクセラレータープログラムによるメンタリング・ビジネスマッチング、大学発ベンチャー支援など、スタートアップの成長段階に応じた包括的なサポート体制が整いつつある。
地銀系CVCの特徴は「地域経済・地場産業の振興」を明確な目的としている点だ。山口キャピタル、南都キャピタルパートナーズ、FFGベンチャービジネスパートナーズ、ひろぎんキャピタルパートナーズなど、主要地銀が相次いでCVC子会社を設立。ミライドア(旧フューチャーベンチャーキャピタル)は全国の地銀・信金と連携し、年間1000社超のベンチャー情報を集約するネットワークを構築している。
2021年の銀行法改正により業務範囲規制が緩和され、地銀はスタートアップへの関与を一層深められるようになった。単なる資金提供者ではなく、起業マインド醸成、経営ノウハウ支援、地域企業との連携仲介など、地銀の持つネットワークとリレーションシップ・バンキングの強みを活かした「伴走型支援」が求められている。
肥後銀行は5年間で700先の創業支援を目標に掲げ、中国銀行は約400人の起業家コミュニティを運営。静岡銀行のTECH BEAT Shizuoka商談会には2日間で3300名が参加し、328件の商談が成立した。地銀が主導するスタートアップエコシステムは、確実に地方から新しい産業を生み出し始めている。