Scope3排出量算定支援サービス市場の動向
2027年3月期から、時価総額3兆円以上の上場企業約70社に対してScope3を含む気候関連情報の開示が義務化され、2030年代には全プライム上場企業約1,600社に拡大する見通しです。SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2025年3月に公表した基準は、国際的なISSB基準と整合させつつ、日本の制度を考慮した内容となっており、企業は自社だけでなくサプライチェーン全体の排出量を把握・管理する必要に迫られています。
Scope3はサプライチェーン全体の間接排出を対象とし、多くの企業ではGHG排出量全体の7割以上を占めます。算定は15のカテゴリに分かれ、購入した製品・サービス(カテゴリ1)、販売した製品の使用(カテゴリ11)などが重要視されていますが、取引先からのデータ収集や排出原単位の選定、一次データの活用など、実務面での難易度は極めて高く、専門的な支援が不可欠です。
算定支援サービスの選定ポイント
Scope3算定支援サービスは大きく分けて、クラウド型算定ツールとコンサルティング型の2種類に分類されます。前者は株式会社ゼロボードの「Zeroboard」やアスエネ株式会社の「ASUENE」のように、GHGプロトコルに準拠した自動算定機能を提供し、ISO14064-3の妥当性確認を取得しているサービスもあります。導入企業数が2,000社を超えるサービスもあり、中堅企業から大手まで幅広く採用されています。
後者のコンサルティング型は、PwC Japan、デロイト トーマツ、野村総合研究所、みずほリサーチ&テクノロジーズなどの大手コンサルティング企業が提供しており、戦略策定から目標設定、削減ロードマップの作成、CDP回答支援、第三者保証対応まで包括的に支援します。特に時価総額が大きい企業や複雑なサプライチェーンを持つ製造業では、コンサルティング型が選ばれる傾向にあります。
一次データ活用と精度向上
2025年3月に環境省が公表した「一次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」では、業界平均の排出原単位ではなく、実際の取引先から提供される実測値(一次データ)の活用が推奨されています。これにより、自社の削減努力が正確に反映され、投資家や顧客への説明力が向上します。
アスエネの「企業別排出原単位機能」やゼロボードの「サプライチェーン連携機能」、野村総合研究所の「NRI-CTS(カーボントレーシングシステム)」などは、サプライヤーとのデータ連携を自動化し、一次データの収集負荷を大幅に軽減する仕組みを提供しています。
業界別の算定支援ニーズ
| 業界 | 主な課題 | 重視されるカテゴリ |
|---|---|---|
| 製造業 | 原材料調達先が多岐にわたり、データ収集が困難 | カテゴリ1(購入した製品・サービス) |
| 小売・流通 | 販売後の製品使用・廃棄段階の排出量推計 | カテゴリ11(販売した製品の使用) |
| 金融 | 投融資先の排出量算定(PCAF対応) | カテゴリ15(投資) |
| IT・サービス | データセンター・オフィスのエネルギー管理 | カテゴリ2(資本財)、3(燃料関連活動) |
国際展開と多言語対応
グローバルにビジネスを展開する企業にとって、多言語対応や海外拠点でのデータ収集機能は重要な選定基準です。ゼロボードは日本語・英語・タイ語・中国語・スペイン語に対応し、アジア圏での導入実績を拡大しています。またBooost株式会社の「ENERGY X GREEN」は、CSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)やEUDR(EU森林破壊規制)などの欧州規制にも対応しています。
「Scope3算定は、自社の削減ポテンシャルを見極めるツールであり、サプライチェーン全体の環境負荷を可視化することで、どの領域に投資すべきかの戦略的意思決定を可能にします」
— アミタ株式会社 宮内達朗氏
CDP回答支援とスコア向上実績
CDPは世界最大の環境情報開示プラットフォームであり、機関投資家が企業の気候変動対応を評価する重要指標です。エスプールブルードットグリーンは2024年に185社243件のCDP回答を支援し、97%以上の企業がB-以上のスコアを獲得、98%の企業がスコアアップまたは維持を実現しています。このような実績は、サービス選定時の重要な判断材料となります。
第三者保証と信頼性確保
日本では2027年以降、サステナビリティ情報開示に対する第三者保証制度の導入が検討されています。ゼロボードはISO14064-3に準拠したシステムの妥当性確認をソコテック・サーティフィケーション・ジャパンより受けており、日本で初めて同妥当性確認を取得したクラウドサービスです。こうした第三者認証は、投資家や監査法人に対する説明力を高めます。
今後の展望
Scope3算定は、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、サプライチェーン全体の脱炭素化を推進し、新たなビジネス機会を創出する戦略ツールとして位置づけられつつあります。サーキュラーエコノミーの推進、再生可能エネルギーの調達、サプライヤーエンゲージメント、削減貢献量(Scope4)の開示など、Scope3を起点とした企業価値向上の取り組みが加速しています。