証券代行サービスの市場構造と選定ポイント
日本の証券代行(株主名簿管理人)業務は、信託銀行4社による高度な寡占市場を形成しています。2025年12月末時点で約3,900社の上場企業が存在する中、三菱UFJ信託銀行・三井住友信託銀行・みずほ信託銀行・SMBC信託銀行の4社がそれぞれ30-40%のシェアを分け合い、事実上の業界標準を確立しています。かつて専業会社として存在した東京証券代行と日本証券代行は2025年1月に三井住友信託銀行へ吸収合併され、現在は信託銀行4社体制となっています。
各社のサービスは一見似ていますが、システム基盤・料金体系・付加サービスに明確な差異があります。三菱UFJ信託銀行は約2,600社の受託実績とトップシェアを強みとし、株主総会運営から取締役会実効性評価まで総合的なガバナンス支援を提供します。三井住友信託銀行はみずほ信託銀行と共同で日本株主データサービスを運営し、日本企業の株主約60%を管理する業界標準システムを保有。一方、SMBC信託銀行は株主数・配当回数に基づく「定額制」料金体系を採用し、基準日から3営業日で株主名簿を提供する迅速性とアクティビスト対策を差別化ポイントとしています。
選定時の重要な視点は、既存メインバンクとの関係・システム連携の容易性・IR戦略との整合性の3点です。特に株主構成分析やESG対応、機関投資家との対話支援といった付加価値サービスは各社で提供レベルが異なるため、IR部門の中長期戦略と照らし合わせた評価が不可欠です。また2025年以降の市場再編(プライム市場の基準厳格化等)を背景に、ガバナンス強化支援や株主構成最適化のコンサルティング能力が一層重要になっています。システム移行には通常6-12ヶ月を要するため、切替検討は決算期・株主総会スケジュールを考慮した計画的なアプローチが求められます。