日本のディープテック投資エコシステム
日本のディープテックベンチャーキャピタル市場は、量子コンピューター、核融合、バイオテクノロジー、宇宙開発といった先端科学技術の事業化に向けて急速に発展しています。政府の「スタートアップ育成5か年計画」の後押しもあり、シード期からグロース期まで、各ステージに特化したVCが増加し、2025年には1,000億円規模の大型ファンドも複数組成されています。
ディープテック領域は研究開発に長期間を要し、製造設備投資も不可欠なため、従来のIT系スタートアップと比べて資金調達戦略が大きく異なります。売上目標の1.5倍相当の資金調達が必要とされるケースも多く、初期のシード投資と、数百億円規模の後期投資の両面で投資家層の充実が求められています。
主要VCは東京大学、早稲田大学、京都大学などの研究機関と連携し、アカデミア発の技術シーズを掘り起こすエコシステムを構築しています。特にBeyond Next VenturesのBRAVEプログラムは200名以上の研究者を事業化に導き、50社以上の起業を実現。累積資金調達総額は約500億円に達しています。
投資対象分野は多岐にわたり、バイオテクノロジー(創薬、再生医療)、量子技術、核融合エネルギー、宇宙開発(衛星、デブリ除去)、新素材(ダイヤモンド半導体)、気候テック、ロボティクス、AI基盤技術など、社会課題解決と経済成長を両立する技術群が注目されています。
日本のディープテックVC業界は、機関投資家からの資金流入が加速し、年金基金、保険会社、海外ソブリン・ウェルス・ファンドの参入も進んでいます。UTECの6号ファンドでは海外投資家比率が15〜20%に達し、グローバル資本の呼び込みにも成功しています。また、ニッセイ・キャピタルが18年の長期ファンドを組成するなど、社会実装に必要な忍耐資本の供給体制も整いつつあります。
さらに、三菱UFJ信託銀行がディープテック特化のデットファンド(最大50億円規模)を設立するなど、エクイティ投資だけでなく融資による資金供給の多様化も進んでおり、スタートアップが成長段階に応じた最適な資金調達手段を選択できる環境が構築されています。