日本のVPP(仮想発電所)アグリゲーター市場
VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)は、工場や家庭の太陽光発電、蓄電池、電気自動車(EV)などの分散型エネルギーリソース(DER)を、IoTとAIを活用して遠隔統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる次世代エネルギーシステムです。
日本では経済産業省が2016年度から「VPP構築実証事業」を開始し、2020年度には10コンソーシアム・94事業者が参加するまでに拡大。2021年度以降は「蓄電池等分散型エネルギーリソース次世代技術構築実証事業」として、VPPの社会実装フェーズに移行しています。
アグリゲーターの2つの役割
VPP事業者は役割によって以下2種類に分類されます:
- リソースアグリゲーター(RA):需要家と直接契約し、太陽光発電・蓄電池・EVなどのエネルギーリソースを遠隔制御する事業者
- アグリゲーションコーディネーター(AC):複数のRAが制御した電力を束ね、一般送配電事業者や卸電力市場で取引を行う事業者
大手電力会社(東京電力HD、関西電力、東北電力、九州電力など)はAC・RA両方の役割を担うケースが多く、IT企業(NEC、エナリス)や商社系(豊田通商、伊藤忠商事)はRAとして専門性を発揮しています。
VPPが注目される3つの理由
1. 再生可能エネルギーの大量導入
太陽光・風力は天候により出力が変動するため、系統の需給バランス調整が課題。VPPは蓄電池やDRを活用して変動を吸収します。
2. 電力市場の自由化
容量市場(2024年度開設)、需給調整市場(2021年開設)などの新市場が整備され、分散型リソースを束ねて市場取引できる環境が整いました。
3. 脱炭素化とレジリエンス
再エネ比率向上とエネルギー安全保障の観点から、地産地消型の分散電源活用が政策的に推進されています。
主要プレイヤーと得意分野
電力会社系:東京電力HD、関西電力(E-Flow)、東北電力、九州電力などは、既存の発電・送配電インフラと顧客基盤を活かし、ACとしての市場取引と、RA業務の両方を展開。
IT・通信系:NEC、エナリス、SBエナジーは、IoTプラットフォームとDERMS(分散型エネルギーリソース管理システム)を自社開発し、RAとして高度な統合制御技術を提供。
商社・自動車系:豊田通商はEV・PHVの車載蓄電池を活用したV2G(Vehicle to Grid)アグリゲーション、伊藤忠商事は蓄電池供給・メンテナンスに強み。
ガス会社系:大阪ガス、東京ガスは家庭用燃料電池「エネファーム」や家庭用蓄電池を束ねたVPPを構築。
VPP市場の現状と課題
2025年現在、日本の一般家庭でのVPP導入はまだ限定的で、主に実証事業や先進的な企業での導入が中心です。商用化は進みつつあるものの、以下の課題が残されています:
- 制御システムの高度化とサイバーセキュリティ対策
- 事業収益性の確保(市場価格変動リスク、初期投資回収)
- 需要家へのインセンティブ設計(DRへの協力意欲向上)
- 電力市場の制度整備(インバランス料金、調整力評価方法など)
一方で、VPPは高い技術力と資本力が求められる領域であり、大手電力・IT・商社を中心としたプレイヤーによる寡占化が進む可能性があります。今後は再エネアグリゲーション、V2G、電力小売との連携など、収益モデルの多様化が鍵となるでしょう。