ゼロトラストネットワーク導入支援企業の選定ガイド
リモートワークの常態化とクラウド利用の拡大により、従来の境界防御型セキュリティモデルは限界を迎えています。ゼロトラストアーキテクチャは「何も信頼しない、すべて検証する」という原則に基づき、すべてのアクセスを継続的に認証・認可する次世代のセキュリティフレームワークです。
市場動向と成長予測
グローバルのゼロトラストセキュリティ市場は、2025年に422.8億米ドル、2032年までに1,245億米ドルに達すると予測されており、年平均成長率16.7%の高成長が見込まれています。日本においても、政府の「サイバーセキュリティ戦略2021」やDX推進計画の一環として、企業のゼロトラスト導入支援が積極化しています。PwC Japanの調査によれば、国内企業の38.5%がすでにゼロトラストを実装済みと回答しており、導入企業からは「DXの推進・多様な働き方の実現」が主な効果として挙げられています。
主要な導入支援ベンダーの類型
- 総合コンサルティングファーム
- PwC、デロイト、アクセンチュアなどのBig4系コンサルティング企業は、ビジネス戦略とセキュリティ要件を統合したゼロトラストアーキテクチャのコンセプト設計から支援します。特にPwCは独自の「BxT(Business eXperience Technology)」アプローチを用いたワークショップを提供し、企業の課題解決とゼロトラスト導入の適合性を評価します。
- 大手SIer・システムインテグレーター
- NTTデータ、NRIセキュア、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSK、富士通などは、自社の大規模導入実績をもとに、設計から実装、運用まで一気通貫で支援します。NTTデータは19万人規模のグローバルゼロトラスト環境を構築した実績があり、この知見を顧客支援に活用しています。CTCは全社4,000人以上が「ゼロトラストコーディネーター」研修を修了し、技術要素と実装・運用計画の理解を深めています。
- セキュリティ専門ベンダー
- NRIセキュアテクノロジーズは、IDガバナンスサービス「OpenStandia KAID」やID管理・認証ソリューション「Uni-ID Libra」などの自社開発ソリューションに加え、Keycloak、Microsoft Entra ID、Oktaの導入支援を提供しています。
- グローバルベンダーパートナー
- Palo Alto Networks、Zscaler、Cisco、Microsoft、Netskope、HPE Aruba Networkingなどのグローバルベンダーは、日本国内の認定パートナーを通じて導入支援を展開しています。ネットワンパートナーズは、Cisco、Palo Alto Networks、Fortinetをニュートラルな視点で評価し、顧客に最適な提案を行っています。
主要ソリューションカテゴリ
ゼロトラスト実現には複数の技術要素が必要です。日本市場で重視されている8つの製品カテゴリは、EDR(Endpoint Detection and Response)、IDaaS(Identity as a Service)、MDM(Mobile Device Management)、SWG(Secure Web Gateway)、CASB(Cloud Access Security Broker)、SASE(Secure Access Service Edge)、SIEM(Security Information and Event Management)、DLP(Data Loss Prevention)です。EDR分野ではMicrosoft、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Cybereasonが人気を集めており、IDaaSではMicrosoft Entra ID、SASEではZscaler、MDMではMicrosoft Intuneが多くの導入事例で採用されています。
導入支援サービスの選定ポイント
ゼロトラスト導入の成否は、コンセプト設計にかかっています。NRIセキュアのコンサルタントは「企業のあるべき働き方を見据えて目的を明確化し、目的に沿ったコンセプト設計を行うこと」を最重視しています。また、PwCの調査では、ゼロトラストを「他者に説明できる程度理解している」企業の多くが、導入に際して外部専門家に相談していることが明らかになっています。技術選定よりも先に、自社のビジネス要件とセキュリティ課題を整理し、それに基づいてベンダーを選定することが重要です。
導入実績と事例
国内では、auカブコム証券、大和証券、カシオ計算機、アサヒグループジャパン、ZOZOグループ、ポケモン、住友商事、竹中工務店、仙台銀行、豊田自動織機ITソリューションズなど、多様な業種でゼロトラスト導入が進んでいます。これらの事例では、リモートワーク環境の安全な実現、クラウドサービス利用の拡大対応、内部不正対策、DX推進の基盤整備などが主な導入目的となっています。